東京地下鉄銀座線
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銀座線(ぎんざせん)は、東京都台東区の浅草駅から渋谷区の渋谷駅間を結ぶ、東京地下鉄(東京メトロ)が運営する鉄道路線。正式名称は3号線銀座線である。
路線名の由来は繁華街の銀座から。車体及び路線図や乗り換え案内で使用されるラインカラーは「オレンジ」(橙):○G
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[編集] 路線データ
- 路線距離(営業キロ):14.3km
- 軌間:1435mm
- 駅数:19駅(起終点駅含む)
- 複線区間:全線
- 電化区間:全線(直流600V第三軌条方式)
- 閉塞方式:車内信号閉塞式(東京メトロCS-ATC)
- 車両基地:上野検車区、上野検車区渋谷分室
- 地上区間:渋谷駅付近
[編集] 概要
1927年(昭和2年)に日本で最初に浅草~上野間で営業を開始した地下鉄である[1]。当時のポスターでは「東洋唯一の地下鉄道」というキャッチコピーが使われ、極東では初めての地下鉄路線であった。
このうち、浅草~新橋間は「東京地下鉄道」によって建設・運営された。本来は新橋から浅草まで一挙に開通させることを目指していたものの、関東大震災後による不況のため資金調達が困難になってしまい、当時は日本一の繁華街で高収益が見込める浅草から上野までの建設を先行させたのである。開業当初は物珍しさもあって、乗車時間わずか5分の区間に乗るため2時間待ちの行列ができたという。その後の経営も順調で7年後の1934年(昭和9年)に全通した。
一方、渋谷~新橋間は目黒蒲田電鉄系の「東京高速鉄道」により建設・運営された。1939年(昭和14年)に渋谷~新橋間が全通した。その後、東京地下鉄道との相互乗り入れ運転が開始された。
戦時体制下の1941年(昭和16年)、両社は国策上設立された特殊法人「帝都高速度交通営団」(営団地下鉄)に統合される。土被りが薄く爆弾等の被害を受けていたため、戦時中は空襲により度々運休となった。また日本陸軍は軍事物資優先輸送のため、空襲時も一般市民の構内への避難を一切許さず、ロンドンやベルリンの地下鉄のように市民の生命を救うことはなかった。
戦後、丸ノ内線が開業する前年の1953年(昭和28年)に、当線に銀座線の名称が付けられた。長く営団の重要路線として機能することとなる。
2004年(平成16年)4月1日の営団の再編に伴う「東京地下鉄」の発足に際しては上野駅で発車式が行われた。
第三軌条集電方式を採用している関係上、ポイント部分など軌条が途切れている区間があり、1993年7月まで使われていた旧型車両では一瞬室内灯が消えて非常灯が点くことがあった。消灯時の反応で東京へ来て間もない人かどうかが判断できるとも言われた。
トンネルが小さい故に車両自体も小さく(東京地下鉄の車体の規格の中で一番小さい)、そのため乗車定員は少ない。1両の定員は100人・102人。また、トンネルが小さい故、車内冷房装置の屋外機が天井に取り付けられないため、小型の冷房装置を使用していて比較的暑い路線である。
輸送人員は一日平均1,016,086人で、浅草・上野・日本橋・銀座・新橋・赤坂・青山・渋谷といった繁華街やビジネス街を縫う様に走る路線のため利用客が多く、日中でも3分に1本の割合で高頻度の運転がなされている。この路線の混雑緩和のために建設されたのが半蔵門線である。また後発の他線に比べても乗り場が浅く、田原町駅や末広町駅、虎ノ門駅、外苑前駅など多数の駅で階段を降りたら目の前が改札口で、改札口を通れば目の前にホームという利用しやすい形態になっている。
上野検車区は地上と地下の2層構造になっていて、地上車庫の入口箇所には日本の地下鉄では唯一となった踏切(しかも日本では珍しい軌道遮断式)が存在する。また、渋谷駅周辺が窪地であるという地形上、同駅では東急百貨店東横店3階にあるホームから発着する。
昭和30年代には渋谷から二子玉川園(現二子玉川)駅への延長の形での東急新玉川線建設が計画されていたが、後に半蔵門線との接続に変更されて、現在の東急田園都市線の形となった。一方、反対の浅草側は、三ノ輪駅への延長計画があったが、昭和50年代に中止された。
赤坂見附駅の溜池山王駅寄りに丸ノ内線とを結ぶ連絡線がある。銀座線車両の重点検整備のための中野工場(中野富士見町駅近在)や小石川工場(茗荷谷駅近在)への回送や、隅田川花火大会開催日の臨時列車(丸ノ内線新宿発浅草行)、中野工場見学会などのイベント列車などが連絡線を通過する。
ホーム有効長が編成長ぎりぎりの駅が多いことから、オーバーラン防止と駅進入速度の向上による運転間隔の短縮・輸送力増強を図るために定位置停止装置(TASC)が設置されている。
[編集] 東京の他の地下鉄との接続状況
銀座線は、都営地下鉄三田線と新宿線以外の9本の地下鉄路線と接続駅がある。だが、三田線とは虎ノ門駅で内幸町駅と、新宿線は神田駅で小川町駅と至近にある。
なお、有楽町線との唯一の接続駅である、赤坂見附駅・永田町駅での乗り換えは、構内を15分以上歩かねばならず、乗り換えの便は悪い。都営浅草線の浅草駅や日本橋駅、新橋駅の乗り換えも、改札を出て10分程度かかる。
[編集] 沿革
[編集] 東京地下鉄道
- 1927年(昭和2年)12月30日 浅草~上野間(2.2km)開業。
- 1930年(昭和5年)1月1日 上野~万世橋(仮)※間(1.7km)開業。
- 1931年(昭和6年)11月21日 万世橋(仮)※~神田間(0.5km)開業。万世橋(仮)駅廃止。
- 1932年(昭和7年)4月29日 神田~三越前間(0.7km)開業。
- 1932年(昭和7年)12月24日 三越前~京橋間(1.3km)開業。
- 1934年(昭和9年)3月3日 京橋~銀座間(0.7km)開業。
- 1934年(昭和9年)6月21日 銀座~新橋間(0.9km)開業。
- 1939年(昭和14年)9月16日 東京高速鉄道と直通運転開始。
- 1941年(昭和16年)9月1日 路線を帝都高速度交通営団に譲渡。
※万世橋(仮)駅は現存せず(撤去済み)。
[編集] 東京高速鉄道
- 1938年(昭和13年)11月18日 青山六丁目(表参道)~虎ノ門間(4.4km)開業。
- 1938年(昭和13年)12月20日 渋谷~青山六丁目(表参道)間(1.1km)開業。
- 1939年(昭和14年)1月15日 虎ノ門~新橋間(0.7km)開業。
- 1939年(昭和14年)9月16日 東京地下鉄道と直通運転開始。渋谷起点変更(+0.3km)。
- 1941年(昭和16年)9月1日 路線を帝都高速度交通営団に譲渡。
[編集] 帝都高速度交通営団→東京地下鉄
- 1941年(昭和16年)9月1日 帝都高速度交通営団発足。東京地下鉄道、東京高速鉄道から路線譲受(14.3km)。
- 1945年(昭和20年)米軍の空襲による施設の破壊のため運休が相次ぐ。
- 1984年(昭和59年)1月1日 01系試作車営業運転開始。
- 1984年(昭和59年)11月30日 01系量産車営業運転開始。
- 1993年(平成5年)7月 全ての車両が01系に統一。
- 1993年(平成5年)8月2日 CS-ATC化により運転最高速度を55km/hから65km/hに引き上げ。所要時間5分短縮(浅草~渋谷間)
- 1995年(平成7年)3月20日 地下鉄サリン事件に関連し午前中の運転を休止、午後から再開。
- 1997年(平成9年)9月30日 溜池山王駅開業(虎ノ門~赤坂見附間)。
- 2004年(平成16年)4月1日 帝都高速度交通営団が民営化して東京地下鉄になる。
[編集] 運転
平日朝2分間隔、平日夕方2分15秒間隔、日中3分間隔
全区間(浅草~渋谷間)通し運転を基本とする。
- 平日朝夕と終列車時間帯に、上野~渋谷間の折り返し便がある。
- 新橋と溜池山王留置車両の虎ノ門始発渋谷行と浅草行が1日各1本ある。
[編集] 車両
6両編成38本228両が在籍。
[編集] 過去の車両
[編集] 駅一覧
駅所在地はすべて東京都内。
駅番号 | 駅名 | 駅間キロ | 累計キロ | 接続路線 | 所在地 |
---|---|---|---|---|---|
G-01 | 渋谷駅 | - | 0.0 | 東京地下鉄:○半蔵門線(Z-01)(※下記注意を参照) ○副都心線(2008年6月開業予定) 東日本旅客鉄道:山手線、埼京線、湘南新宿ライン 東京急行電鉄:東横線、田園都市線(※下記注意を参照) 京王電鉄:井の頭線 |
渋谷区 |
G-02 | 表参道駅 | 1.3 | 1.3 | 東京地下鉄:○千代田線(C-04)、○半蔵門線(Z-02) | 港区 |
G-03 | 外苑前駅 | 0.7 | 2.0 | ||
G-04 | 青山一丁目駅 | 0.7 | 2.7 | 東京地下鉄:○半蔵門線(Z-03) 都営地下鉄:○大江戸線(E-24) |
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G-05 | 赤坂見附駅 | 1.3 | 4.0 | 東京地下鉄:○丸ノ内線(M-13)、○有楽町線(永田町駅:Y-16)、○半蔵門線(永田町駅:Z-04)、○南北線(永田町駅:N-07) | |
G-06 | 溜池山王駅 | 0.9 | 4.9 | 東京地下鉄:○南北線(N-06)、○丸ノ内線(国会議事堂前駅:M-14)、○千代田線(国会議事堂前駅:C-07) | 千代田区 |
G-07 | 虎ノ門駅 | 0.6 | 5.5 | 港区 | |
G-08 | 新橋駅 | 0.8 | 6.3 | 都営地下鉄:○浅草線(A-10) 東日本旅客鉄道:東海道線、横須賀線、山手線、京浜東北線 ゆりかもめ:東京臨海新交通臨海線(U-01) |
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G-09 | 銀座駅 | 0.9 | 7.2 | 東京地下鉄:○丸ノ内線(M-16)、○日比谷線(H-08) | 中央区 |
G-10 | 京橋駅 | 0.7 | 7.9 | ||
G-11 | 日本橋駅 | 0.7 | 8.6 | 東京地下鉄:○東西線(T-10) 都営地下鉄:○浅草線(A-13) |
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G-12 | 三越前駅 | 0.6 | 9.2 | 東京地下鉄:○半蔵門線(Z-09) 東日本旅客鉄道:総武線(快速)(新日本橋駅) |
|
G-13 | 神田駅 | 0.7 | 9.9 | 東日本旅客鉄道:山手線、京浜東北線、中央線(快速) | 千代田区 |
G-14 | 末広町駅 | 1.1 | 11.0 | ||
G-15 | 上野広小路駅 | 0.6 | 11.6 | 東京地下鉄:○日比谷線(仲御徒町駅:H-16) 都営地下鉄:○大江戸線(上野御徒町駅:E-09) 東日本旅客鉄道:山手線(御徒町駅)、京浜東北線(御徒町駅) |
台東区 |
G-16 | 上野駅 | 0.5 | 12.1 | 東京地下鉄:○日比谷線(H-17) 東日本旅客鉄道:東北新幹線、上越新幹線、長野新幹線、宇都宮線、高崎線、常磐線(快速)、山手線、京浜東北線 京成電鉄:本線(京成上野駅) |
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G-17 | 稲荷町駅 | 0.7 | 12.8 | ||
G-18 | 田原町駅 | 0.7 | 13.5 | 首都圏新都市鉄道:つくばエクスプレス線(浅草駅:銀座線浅草駅より当駅の方が比較的近い) | |
G-19 | 浅草駅 | 0.8 | 14.3 | 都営地下鉄:○浅草線(A-18) 東武鉄道:伊勢崎線 |
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※注意
- 渋谷駅では銀座線と半蔵門線は接続業務を行っておらず、事実上異なる駅として扱われている(相互に乗り換えるには必ず一旦改札の外に出ることになる)。銀座線と半蔵門線・東急田園都市線の乗り換えは公式には同一ホームで乗り換え可能な表参道駅を案内している。
[編集] 関連項目
- 日本の鉄道路線一覧
- 早川徳次 (東京地下鉄道)
- 杉浦非水 上野~浅草間開業時のポスターをデザインしたグラフィックデザイナー
- 帝都物語(舞台として)
- 井上夢人 小説家。インターネットで連載した小説「99人の最終電車」の舞台となっている。