東京地下鉄10000系電車
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10000系電車(10000けいでんしゃ)は東京地下鉄(東京メトロ)有楽町線の通勤形電車である。
2006年(平成18年)9月1日から営業運転を開始しており、現在は有楽町線で営業運転を行っている。
帝都高速度交通営団から東京地下鉄へ移行後、初の新系列である。
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[編集] 概要
- 東西線の05系(第40編成以降)や東葉高速鉄道の2000系と同様のアルミ合金ダブルスキン構造車体(A-train)だが、今までより軽量になっている。同じ日立製作所で製造された福岡市交通局3000系や近畿車輛製の西日本旅客鉄道(JR西日本)321系に類似するデザインである。
- 報道によると、2007年度までに10両編成20本の計200両が日立製作所で製造される予定で、副都心線の開業後は7000系とともに有楽町線と共用する予定である。また価格は1編成10両で約12億円である。
- 先頭車の貫通扉は5000系以来の中央設置とした。また、前面左右の灯火類設置部は鍵穴の形状をしている。この前面デザインはかつて丸ノ内線を走った営団300形・400形・500形などのイメージや伝統を踏襲する狙いがあるとのことで、「和製トングリ」とも言うべき丸みを帯びたデザインとなっている。警笛については、東京メトロでは初めて製造された車両であることを認識するため、営団1000形など銀座線の旧型車に採用していたトロンボーン笛を再現している。
- 前面は中央非常口構造であるが、運転台スペースを広く取ってあるため、非常時の通路は斜めとなる。側面の乗務員室扉は室内側も無塗装である。乗務員室の天井の高さは客室より低い。
- 有楽町線を定期運転する車両としては初めてワンハンドル式マスコン(両手操作・力行4ノッチ常用制動7ノッチ)およびデッドマン装置を採用した。08系などと同様にノッチ位置表示灯が設置されており、ATCによる制動の場合もブレーキ位置表示となる。速度計は近年の他系列と同様に白地で、電照可能な120km/h表示のものである。
- パンタグラフはシングルアーム式で、05系13次車の3基から5基に増加した。
- 行先表示器と種別表示器は明朝体の3色LEDで、側面表示器では東武50000系列と同様に号車表示も行っている。なお、ローマ字併記を併記しているが、号車表示では表示されていない。
- 前面のみ行先表示器と種別表示器が別になっている。種別表示器は運用番号表示器と一体化しているが、運用番号の表示が左側に寄っているのは、右側にローマ字併記の種別を表示するためである。
- 保守簡易化のため、台車はモノリンク構造のボルスタ付きを採用した。
- 運転台は、運転士用ドアスイッチの準備工事やワンマン・ツーマン切り替えスイッチの準備工事が行われており、将来はワンマン運転を開始する予定である。そのため、9000系や02系のようなドア開閉スイッチなどの機器を搭載した仕様になっている。
- 冷房装置は、従来車とは異なった形状のものが使われている。
- 車体帯は、側面が上から茶(太い帯)・黄(ゴールド)(細い帯)・白(細い帯)、前面・背面が10101Fから10104Fでは上から白(太い帯)・黄(細い帯)・茶(太い帯)となっている。10105F以降はこの内前面のゴールド帯が廃止された。但し、07系などとは違い前面・背面と側面の帯はつながっていない。
- 側面窓上の社紋マークはプレート状取り付けに戻った(05系13次車は直接貼り付け)。
- 行先表示器には、新宿三丁目や元町・中華街など副都心線の行先も用意している。また、「新木場」「豊洲」「市ヶ谷」「池袋」「小竹向原」「和光市」「志木」「川越市」「森林公園」「練馬」「練馬高野台」「清瀬」「所沢」「小手指」「飯能」「西武球場前」「新線池袋」「新宿三丁目」「渋谷」「元町・中華街」が少なくとも設定されている。
- 製造年の表記は、編成番号フォントと同じフォントが使われている。
- ドアチャイムのバグ(チャイムが鳴らなかったり、再開閉した時の音になったり)が起きることがある。
[編集] 編成
南北線の9000系と同様に新規路線である副都心線開業用の新製車でもあり、同線用としては代替車及び増備車ではないため、「0x系」という付番の系列ではない。下3桁の車両番号の付け方は6000系以降の他系列と同様に百位が連結位置(10号車は0)、十位と一位が製造順の番号となっている。
以下のようになっている。簡易運転台設置車両が編成中に4両存在し、2両を抜いて8連での運行にも対応している。なお、CTは(付随)制御車、Mcは簡易運転台付き電動車、Tcは簡易運転台付き付随車、Mは中間電動車、Tは中間付随車を表す。
- ←新木場・新線池袋(A線側) 小竹向原・和光市・西武線・東武線方面(B線側)→
10100(CT)-10200(M)-10300(Mc)-10400(Tc)-10500(Mc)-10600(Tc)-10700(T)-10800(M)-10900(M)-10000(CT)
編成番号は、営団地下鉄時代に多用された独自のものを使用している。
[編集] 室内
車内案内表示器は、従来のLED式から東京メトロの車両としては初めてLCD式を採用した上で、客用ドア1ヶ所あたりに2台搭載し、右側LCDの映像は行先・次の駅と乗り換え案内・所要時間・運行情報などを表示するなど、東急5050系や横浜高速鉄道Y500系と同じ構造としている。2006年9月の営業運転開始時点では右側のLCDだけを使用しているため、10104Fまでは左側を設置準備スペースとして確保した状態で投入された。なお、2007年に製造された10105Fからは左側のLCDも設置を完了している(10101F~10104Fへの左側LCD追加設置については未定)。また、LCDには時折東京メトロの乗車券やインターネットサイトなどの広告も展開しているが、乗り入れ先でも東京メトロの広告が表示される。乗り入れ先の自動放送は、東武東上線内が7000系(搭載車のみ)・07系や東武9050系などと仕様を合わせた男声、西武有楽町線・池袋線内の自動放送も西武6000系などと仕様を合わせた女声であり、ともに英語放送の設定はない。なお、有楽町線内でもラッシュ時は英語放送を行わない(詳細はこちらを参照)。
側扉窓の支持方式は、05系13次車とは異なり近年の6000系・8000系の一部の改造車にやや似ているもので、車外側から見ると支持部が黒く見え、室内側は07系と同様にゴムを併用する大型の平面的な支持具であるが、07系とは異なりゴム部以外は銀色である。ドアの開閉チャイム音は従来車の2打式から3打式に変更されたが、音が東日本旅客鉄道(JR東日本)E231系や相模鉄道10000系、東京都交通局(都営地下鉄)新宿線向けの10-300形に近い。10105Fは扉閉め力弱め機構を東京メトロで初めて搭載している。
蛍光灯や空調ダクトの一体化で07系より天井が18.5cm高い241.5cmとなった。車内貫通扉は東京メトロの車両では初のガラス張りを採用した。妻面窓は設置されていない。また、荷棚も透明になっている。平天井ではなく、高い中央部と低い左右の部分の間に凹みができている。照明はカバーのない蛍光灯で、他系列のように天井側から支持している方式ではなく、横側から支持している形状のもので、10104Fまでは当初天井の凹みの中に埋まっているような形態で設置されていたが、2006年11月から12月にかけて全編成が支持具の長さを長くし、凹みから飛び出ている状態に変更した。10105Fは新造時から飛び出ている。つり革を設置する手すりは、従来とは異なり、扉間軌道方向のものは端部が曲がって天井に向かっているものである。天井との支持部分は溝のような部分の中に入っている。なお、天井から出て荷棚に至る棒は、7人掛け座席の場合、そのまま下に下りてスタンションポールになっているもの(扉間1箇所当たり座席端部と3+4人に分割するものの計3本)の他、荷棚の高さで止まっているものが1本ある。
座席や床はオレンジ色である。室内の化粧板は灰色1色であるが、乗務員室仕切り部を除く妻面はオレンジ色である。客室と乗務員室の仕切り窓は3ヶ所で、乗務員室扉は中央ではなく客室側から見てやや右側に寄っている。このうち、乗務員室扉窓は着色ガラスとしている。また、つり革は従来通り三角形のもので、枕木方向の設置本数は各列2本であり、優先席付近のものは製造当初からオレンジ色のものが使われている。なお、05系13次車に設置されていたフリースペースは廃止された。
[編集] 性能
基本的な性能は、05系の第34編成以降と同様である。
- MT比5M5T構成。簡易運転台については前述部を参照。
- 設計最高速度120km/h
- 起動加速度3.3km/h/s
- 減速度3.5km/h/s(非常5.0km/h/s)
- 主電動機出力165kW(×20基)
- 歯車比6.21
[編集] 運行区間
現在は有楽町線および有楽町新線から東武鉄道東上線および西武鉄道西武有楽町線・池袋線(野球開催時等で狭山線)への直通運転に使用されている。また、副都心線開業後は同線でも運行を開始し、2012年度には渋谷駅から同線との直通運転が予定されている東京急行電鉄東横線を経由し、横浜高速鉄道みなとみらい線への乗り入れも計画されている。
[編集] 歴史
- 2006年5月29日~31日に最初の編成である10101Fが綾瀬検車区まで甲種輸送された。その後10102F~10104Fについても8月4日までに同区まで甲種輸送された。
- 2006年9月1日に10101Fが東京地下鉄線および東武東上線での営業運転を開始し、数日後に10102Fと10103Fも営業を開始、その後しばらくしてから10104Fも営業を開始した。このうち10101Fは茶色、10102Fは青色の記念ステッカーを先頭車の前面左側に貼付した(10101Fは撮影会後、10102Fは11月頃に撤去。)。この10000系導入を記念して、30日に新木場車両基地で10101Fと07系07-101F、7000系7101Fを並べた撮影会が行われた。また、2006年12月23日の東武東上線クリスマスイベントにも10104Fが展示されていた。
- 10104Fまでは蛍光灯の位置が改造されて前よりも明るくなった(室内の項を参照)。
- 2007年2月23日~25日に10105Fが、3月には10106Fが甲種輸送された。4月には10107Fと10108Fも甲種輸送される予定である。
- 西武線への乗り入れは、同線での試運転で発生した誘導障害を2007年1月にクリアし、翌2月23日から開始している。
[編集] 有楽町線における車両の転配について
- 有楽町線では、2006年9月1日より順次10000系を4編成(40両)投入して営業運転を開始した。それに伴い、副都心線のホームドアに対応できずにやむを得ず余剰となった07系4編成を同年度内に東西線に転出させた。これにより、同線の5000系が2007年3月までに営業運転を終了した。
[編集] 外部リンク
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