巡礼 (通俗)
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巡礼(じゅんれい)とは、熱心なファン心理から、自身の好きな物に縁のある土地を聖地と呼び、訪れる事を指す俗語である。宗教的な聖地を訪れる本来の巡礼から転じた言葉。
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[編集] 概要
本来巡礼とは、宗教において、重要な意味を持つ聖地に赴く宗教的な行為の事である(本来の巡礼に付いての詳細は巡礼の項を参照)。
ここから転じる形として、物語の舞台となった場所、スポーツなどの名勝負の舞台となった場所等といった、本人にとって思い入れのある場所を「聖地」と呼び、この「聖地」を実際に訪れ、憧れや興奮に思いを馳せることを、巡礼と呼ぶ様になった。
自身に取って特別な思い入れのある土地の事を聖地と呼ぶ事自体は、「○○のメッカ」といった表現がある様に決して新しい物ではなく、またこうした「自身にとって思い入れのある土地を訪れる事」も古くから観光の目的ととしては一般的な物の1つであり特に珍しい物ではない。従って比喩表現としての巡礼は古くから使われていた可能性が高いが、広まったのには近年の事であり、インターネットの普及による所が大きい。
巡礼を果たしたファンがWebページを用いて「巡礼の概要報告」が伴うことが増えており、こうした様々な作品のファンサイトによって聖地が特定され広まる事も多い。漫画やアニメといった絵のある作品の場合、作中の場面とそれに該当する現地の写真を掲載して、それらを比較するという形態を取る事も多い。エスカレートしたものの中には、その場面に登場するキャラクターのコスプレをして、同じポーズをとって写真に収まっているというものまで存在している。
巡礼の対象となる作品も幅を広げており、古くから対象となっていた小説や映画はもちろんの事、近年は特にサブカルチャーに分類される作品が対象となる事が多い。極端な例としては、外国のアダルトゲームファンが来日してエルフ本社を巡礼したという例も存在する。
[編集] 影響
- メリット
- 巡礼の対象として広く認識された場合、多くの人が訪れる事となり、観光資源としての価値が生ずる。この為近年では、町興しの一環として地元フィルム・コミッションや観光協会が、積極的にアニメ作品に協力したり、活用したりする例も増えている。地元の商店などが、作品ポスターを貼ったり、来訪者用の落書きノートを置いたりして、ファンの間で口コミになることも少なくない。
- デメリット
- 巡礼の対象となっている場所には一般の住宅街等も含まれており、付近の住民の日常生活に影響を与える事もある。近年問題化している「小学生女児が被害者になっている事件」や、心無いファンなどによる住民への迷惑などの影響で、作品によっては発行元が「聖地巡礼自粛のお願い」を呼びかける事象も発生している。これは、巡礼対象となる小学校周辺で、普段見かけない人物が徘徊することで、近隣住民に過度な不安を抱かせないように、との配慮であると考えられる。
- また、一方で「峠の走り屋を題材としたアニメ」では、取り上げられた峠に走り屋が集結して、地元警察が対策に乗り出す例もある。
- 近年ではひぐらしのなく頃にで、神社におたく的な絵(いわゆる萌え絵)や巡礼記念の書残しをした心無いファンの痛々しい行為の画像が2ちゃんねる等で話題になるなどの事例がある。
[編集] 聖地
巡礼の対象となる場所は「聖地」と呼ばれるが、この「聖地」の主な種類には以下の物が挙げられる。
- 作品のモデルとなった場所
- 実際に作中に舞台として出て来た実在の場所
- 地名等は変えられながらもモデルと推定出来る場所
- 映像作品の撮影場所
- 出生地等といった作者等の縁の土地
- 制作会社
- イベント・大会・試合等の会場となった場所
この他にも様々な種類があり、「登場キャラクターの名前の元ネタとして使われた」等と、直接的な関わりがない様な場所であっても巡礼の対象となる場合もある。
[編集] スポーツの聖地
大きな大会が行われる場所が対象となる事が多い。
[編集] 競技場
- 阪神甲子園球場(高校野球・プロ野球)
- ヤンキースタジアム(大リーグ)
- 国立霞ヶ丘陸上競技場(サッカー)
- ウェンブリー・スタジアム(サッカー)
- エスタディオ・サンティアゴ・ベルナベウ(リーガ・エスパニョーラ)
- 有明コロシアム(テニス)
- ウィンブルドン(テニス)
- 近鉄花園ラグビー場(ラグビー)
- トゥイッケナム・スタジアム(ラグビー)
- 両国国技館(大相撲)
- 後楽園ホール(各種格闘技)
- さいたまスーパーアリーナ(PRIDE)
- ディファ有明(プロレスリング・ノア)
- ラスベガス(各種格闘技)
- 国立代々木競技場第一体育館(バレーボール)
- 国立代々木競技場第二体育館(バスケットボール)
- マディソン・スクエア・ガーデン(NBA)
- エムウェーブ(スケート)
[編集] レース場
[編集] 小説の聖地
小説の場合、映像化されていないため、ファンは頭の中でイメージを膨らませて、美化している場合が特に多い。中高年の場合には、金銭的な余裕もあって、国内にとどまらず海外にまで足を伸ばすことも少なくない。最近は、推理小説関係が多い。
- 『シャーロック・ホームズシリーズ』 - ロンドン
- 『ハリー・ポッター』 - ロンドン
- 『ピーターラビット』 - イギリス・湖水地方
- 夏目漱石作品 - 松山市など
- 三島由紀夫作品 - 国内多数
- 西村京太郎作品 - 国内多数
- 『炎の蜃気楼』 - 米沢市(上杉祭り)、松本市、箱根、高野山等(通称ミラージュツアー)
- 『半分の月がのぼる空』 - 伊勢市、 虎尾山
[編集] 音楽の聖地
人物縁の場所が多く見られる。作品に登場する場所の場合は、小説同様に基本的には絵が無いメディアのためイメージを膨らませて、美化している場合が多い。
- 日本武道館(ビートルズが初めてコンサート会場として使用した事に起因)
- サザンオールスターズ - 茅ヶ崎、鎌倉、横浜、キラー通り(東京都)
- B'z - 岡山県津山市(ボーカル稲葉の実家周辺)
- GLAY - 函館
- ZARD - 湘南サブマリンドッグ(現在閉店)
- SMAP - 西武園ゆうえんち
- ゆず - 横浜松坂屋
- V6 - 国立代々木競技場第一体育館
- ビートルズ - リヴァプール
- ジャズ - ニューオーリンズ
- エルヴィス・プレスリー - メンフィス
[編集] 映画の聖地
作中の舞台と共に、ロケ地も対象となる事が多い。映画に登場した場所は一時的な観光スポットになる事が多く、多くのファンが駆けつける事が多い。各自治体なども、そうした観光スポットとなる事を狙って、積極的に誘致することもある。近年では住民などが「映画誘致のための団体」を設けて、製作会社などに積極的なPRを行うことも、珍しくはない。
[編集] 海外
[編集] 日本
殆どは監督作品または連作された映画が多い。
[編集] ドラマの聖地
映画同様、舞台と共にロケ地も対象となる。テレビドラマに登場した場所も、一時的ではあるが聖地巡礼される事が多い。『冬のソナタ』などの大ヒット作になると、旅行会社によるツアーが用意されるなど、現地にとっても大きな観光スポットとなる事がある。
- 『冬のソナタ』 - 春川市など韓国各地
- 『北の国から』 - 富良野市
- 『フレンズ』 - ニューヨーク
- 『Dr.コトー診療所』 - 与那国島
- 『踊る大捜査線』 - レインボーブリッジ、湾岸署(江東区潮見)
- 『白線流し』 - 松本市
- 『東京ラブストーリー』 - 愛媛県 (大洲市、久万町、松山市、砥部町)
- 『ロングバケーション』 - 隅田川近辺
- 『3年B組金八先生』 - 東武伊勢崎線堀切駅周辺(足立区立第二中学校他)、北千住駅周辺、荒川近辺
[編集] バラエティ番組の聖地
映像の撮られたロケ地が対象となる事が多い。
- 『水曜どうでしょう』 - 札幌市豊平区平岸(北海道テレビ放送本社、平岸高台公園、ローソン南平岸駅店)、名古屋市中区(藤村忠寿ディレクターの実家の喫茶店)
- 『ドラバラ鈴井の巣』 - 札幌市白石区(菊水円形歩道橋、札幌コンベンションセンターなど)
- 『ノブナガ』 - 松山駅(じゃこ天おばちゃんの店)
- 『探偵!ナイトスクープ』 - 駒川商店街
- 『クヮンガクッ』 - 難波高島屋
[編集] 特撮の聖地
- 平成仮面ライダー - さいたまスーパーアリーナ、味の素スタジアム
- 宇宙刑事シリーズ - 浜岡砂丘、大英鉱業採石場、秩父鉱業採石場跡地
- スーパー戦隊シリーズ - 東京都内各地
[編集] アニメ映画
[編集] 漫画・アニメの聖地
[編集] 北海道・東北
- 『ノエイン もうひとりの君へ』 - 北海道函館市
- 『最終兵器彼女』 - 北海道小樽市
- 『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』 - 北海道新ひだか町(旧静内町)
- 『僕等がいた』 - 北海道釧路市
- 『Kanon』(TVアニメ第2作) - 北海道札幌市
[編集] 関東
- CLAMP作品 - 東京都港区 東京タワー
- 『フタコイオルタナティブ』 - 東京都世田谷区 東京急行電鉄二子玉川駅周辺
- 『逮捕しちゃうぞ』 - 東京都墨田区周辺
- 『LOVELESS』 - 東京都世田谷区 東京急行電鉄二子玉川駅周辺
- 『めぞん一刻』 - 東京都東久留米市西武鉄道東久留米駅周辺
- 『らんま1/2』 - 東京都練馬区西武鉄道大泉学園駅周辺
- 『電影少女』 - 東京都三鷹市・武蔵野市 JR三鷹駅、武蔵境駅、吉祥寺駅周辺
- 『マリア様がみてる』 - 東京都三鷹市・武蔵野市 JR三鷹駅、武蔵境駅、吉祥寺駅周辺
- 『フルメタル・パニック!』 - 東京都調布市 京王電鉄仙川駅周辺
- 『新世紀エヴァンゲリオン』 - 神奈川県足柄下郡箱根町 芦ノ湖、箱根登山鉄道箱根湯本駅周辺
[編集] 神奈川県鎌倉市・湘南
- 『鎌倉ものがたり』
- 『Cosmic Baton Girl コメットさん☆』
- 『美鳥の日々』
- 『エルフェンリート』
- 『天空のエスカフローネ』
- 『うた∽かた』
- 『Memories Offシリーズ』
- 『ふたつのスピカ』
- 『恋風』
[編集] 中部
- 『おねがい☆ティーチャー』シリーズ - 長野県大町市 木崎湖周辺(海ノ口駅等)、松本市(旧制松本高校)、軽井沢町(チャーチストリート)
- 『まんが道』 - 富山県高岡市(高岡大仏、高岡古城公園等)
- 『苺ましまろ』 - 静岡県浜松市
- 『究極超人あ~る』(OVA) - 飯田線(田切駅等)
[編集] 近畿
[編集] 中国地方
[編集] 九州・沖縄
[編集] 海外
- 『ARIA』 - イタリア ヴェネツィア
- 『GUNSLINGER GIRL』 - イタリア各地
[編集] ゲームの聖地
- 『Kanon』 - 京阪電鉄守口市駅、国立昭和記念公園、元町商店街(横浜市中区)
- 『痕』 - 石川県七尾市・和倉温泉(加賀屋、和倉温泉駅)
- 『みずいろ』 - 所沢駅
- 『デスクリムゾン』 - エコールソフトウェア本社、友ヶ島
- 『ひぐらしのなく頃に』 - 白川郷(白川村)
- 『夜明け前より瑠璃色な』 - 海響館、三越福岡店、JR高松駅
- 『ガンパレード・マーチ』 - 熊本市街
- 『SHUFFLE!』 - JR札幌駅南口、府中の森公園、開智高等学校
- 『北へ。』シリーズ - 北海道各地
- 『風雨来記』 - 北海道
- 『おかえりっ!~夕凪色の恋物語~』 -岡山県笠岡市真鍋島
- 『潮風の消える海に』 JR鶴見線 国道駅、浅野駅、海芝浦駅(神奈川県横浜市鶴見区)
[編集] オタクカルチャーの聖地
オタクカルチャー関連の専門店街として知られていて、多くのオタクの人々にとって、聖地とされている場所である。また近年は、秋葉原のことを世界史を捩って、「エルサレム」と呼ぶ人も出現している。
- 秋葉原(パソコン、アニメ、ゲーム、同人誌等現代日本のサブカルチャーの中心地)
- 池袋乙女ロード(サンシャイン60の向かいの通り、秋葉原に対してボーイズラブの中心地)
- 大阪府大阪市中央区・浪速区日本橋でんでんタウン
- 愛知県名古屋市中区大須
- 東京都豊島区椎名町(「トキワ荘」関係)
- 東京都 中野ブロードウェイ
[編集] 関連記事
[編集] 外部リンク
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