武蔵国
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武蔵国(むさしのくに)は、かつて日本の地方行政区分だった令制国の一つである。
現在の埼玉県と東京都の隅田川より東の地域と島嶼を除く部分および神奈川県の北東部(現在の川崎市全域と横浜市東部・沿岸部)を合わせた地域に当たる。武州(ぶしゅう)と呼ぶこともある。
飛鳥京・藤原宮木簡には、无耶志国と表記。また、7世紀頃までの武蔵は「无射志」(むざし)と表記されていた記録も見つかっている(→#外部リンク)。
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[編集] 歴史
7世紀に成立した。当初は東山道に属したが、宝亀2年 (771年) 10月27日に東海道に移された。
平安時代後期には同属的武士団が生まれ割拠していた。それらは後の世に武蔵七党と呼ばれることとなる。彼らは鎌倉幕府成立の大きな力となった。
戦国時代後期から後北条氏が大きな勢力を振るうようになったが、1590年、羽柴秀吉による小田原征伐で北条氏が滅亡。以後徳川家康が江戸に移り、江戸幕府開府以後は徳川政権のお膝元となり、日本政治の中心地となる。 近世初期(1683年(貞享3年)また一説によれば寛永年間(1622年-1643年)に、下総国葛飾郡からその一部、すなわち隅田川から利根川 (現在の江戸川下流) までの地域をあわせ、武蔵国の葛飾郡とした。
明治維新とそれに続く東京奠都によって国都が山城国の平安京(京都)から、武蔵国の東京(旧江戸)に遷された。
[編集] 国府・国分寺・国分尼寺・安国寺・利生塔・一宮以下・総社
国分寺は現在の東京都国分寺市西元町にあった。その法燈を継承する寺院として同地に医王山最勝院国分寺(本尊:薬師如来)がある。国分尼寺は未詳。安国寺は東京都府中市片町の龍門山等持院高安寺(本尊:釈迦如来)と埼玉県越谷市大泊の大龍山東光院安国寺(本尊:阿弥陀如来)が法燈を受け継ぐ。利生塔は未詳である。
延喜式神名帳には大社2座2社・小社42座の計44座が記載されている。大社は足立郡の氷川神社と児玉郡の金佐奈神社(現 金鑽神社)で、どちらも名神大社に列している。
一宮は元々は小野神社(東京都多摩市一ノ宮。主祭神:小野大神=天下春命)であったが、戦国時代にそれまでの三宮の氷川神社(埼玉県さいたま市大宮区高鼻町)が並存するようになった。
総社は大國魂神社(東京都府中市宮町)で、別名・六所宮と称し、武蔵国内の一宮から六宮までの祭神が祀られている。それによれば、二宮は東京都あきる野市二宮の二宮神社(主祭神:小河大神=国常立尊)、三宮は前掲の氷川神社(主祭神:氷川大神=須佐之男命、稲田姫命)、四宮は埼玉県秩父市番場町の秩父神社(主祭神:秩父大神=八意思兼命、知知夫彦命)、五宮は埼玉県神川町二宮の金鑽神社(主祭神:金佐奈大神=天照大神、素盞鳴尊)、六宮は杉山神社である。このうち杉山神社については比定社が複数あるが、多くは横浜市内に集中する。氷川神社が一宮と称されるようになってからは、五宮の金鑽神社が二宮とされるようになった。また、さいたま市浦和区宮本の氷川女體神社も元は氷川神社から分かれたものであり、江戸時代以降一宮とされるようになった。
[編集] 国司
[編集] 武蔵守
※日付=旧暦 ※在任期間中、「 」内は、史書で在任が確認できる最後の年月日を指す。
- 藤原内麻呂(806年<延暦25>1月28日~806年<延暦25>4月18日)従三位中納言
- 藤原真夏(807年<大同2>6月20日~807年<大同2>4月26日)従四位下
- 春原五百枝(806年<大同2>8月20日~807年<大同2>8月26日)従四位上
- 安倍鷹野(808年<大同3>7月9日~809年<大同4>2月28日)正五位下
- 礒野王(809年<大同4>3月11日~ )従五位下
- 吉備泉(810年<大同5>7月16日~814年<弘仁5>閏7月8日)正四位下→正四位上参議
- 大伴国造(825年<天長2>1月11日~826年<天長3>1月21日)従四位上参議
- 藤原綱継(826年<天長3>1月21日~826年<天長3>3月3日)従四位上
- 大伴国造(826年<天長3>3月3日~826年<天長3>8月28日)従四位上参議
- 石川河主( ~830年<天長7>12月27日)正四位上
- 道野王(836年<承和3>~ )従四位下
- 正道王(840年<承和7>1月30日~841年<承和8>6月11日)従四位下
- 源信(841年<承和8>7月8日~ )正三位参議
- 田口佐波主(842年<承和9>8月11日~ )従四位下
- 林常継(843年<承和10>1月12日~ )従五位下
- 佐伯利世(845年<承和12>1月11日~845年<承和12>8月25日)正五位下
- (権守)丹墀門成(846年<承和13>2月11日~ )従五位下
※丹と門の間の字=土へんに、犀。
- 橘本継(849年<嘉祥2>1月13日~ )従五位下
- 丹墀石雄(850年<嘉祥3>1月13日~ )従五位上
※丹と石の間の字=土へんに、犀。
- 文屋笠科(851年<嘉祥4>1月16日~ )従五位上
- 良岑長松(858年<天安2>1月16日~ )従五位上
- (権守)房世王(858年<天安2>2月5日~858年<天安2>3月8日)従四位下
- (権守) 平春香(861年<貞観3>2月16日~ )従五位上
- 藤原忠雄(862年<貞観4>1月13日~ )従五位下
- (権守) 平有世(864年<貞観6>1月16日~ )従五位上
- 橘春成(867年<貞観9>1月12日~同年2月11日)従五位上
- 藤原安棟(872年<貞観9>2月11日~ )従五位下
- 紀安雄(877年<元慶元>~ )従五位上
- (権守)源行有(883年<元慶7>~「884年(元慶8)2月5日」)従五位上
- 藤原貞幹(885年<元慶9>1月16日~ )従五位上
- 源長淵(885年<元慶元>2月20日~ )従四位上
- 棟貞王(887年<仁和3>5月13日~ )従四位上
- 藤原邦基(906年<延喜6>8月28日~910年<延喜10>2月15日)
- 藤原高風(917年<延喜17>1月29日~ )正五位下
- 高向利春(918年<延喜18>2月29日~ )従五位下
- (権守)興世王(「938年<元慶元>2月~940年<元慶3>2月」)
- 百済貞連(939年<元慶2)>5月15日~ )従五位下
- 藤原秀郷(940年<元慶3>3月9日~ )従四位下
- 平公雅(942年<元慶5>~ )
- 源満仲(949年<天暦3>3月=平安遺文補262に在任記事 )従五位上
- 藤原寧親(996年<長徳2>1月25日~999年<長保元>10月19日)従五位下
- 藤原惟経(1040年<長暦4>1月25日~ )
- 藤原長賢(1091年<寛治5>1月28日~ )
- 藤原成実(1095年<嘉保2>~1102年<康和4>7月11日)従五位下
- 藤原行実(1103年<康和5>2月30日~同年8月13日)正四位下
- 源顕俊(1103年<康和5>11月1日~「1107年<嘉承2>7月24日」)従五位下→正五位下
- 高階経敏(1112年<天永3>1月27日~1119年<元永2>11月)
- (権守) 紀為宗(1116年<永久4>1月~「1119年<元永2>5月30日」)従五位下
- 藤原公信(1125年<大治2>12月7日~「1127年<大治4>7月3日」)
- (権守) 橘盛賢(1127年<大治4>2月17日~ )従五位下
- (権守) 惟宗貞光(1137年<保延3>1月30日~ )
- 藤原季行(1142年<康治元>12月30日~1150年<久安6>7月28日)従五位上
- 藤原信頼(1150年<久安6>7月28日~1157年<保元2>8月23日)従五位上→従四位上
- (権守) 藤原有盛(1153年<仁平3>1月22日~1155年<久寿2>10月26日)
- 藤原信説(1157年<保元2>~ )従五位上
- 平知盛(1160年<永暦元>2月28日~1166年<仁安元>)従五位下→正五位下
- 平知盛(1167年<仁安2>2月11日~同年12月30日)従五位下
- 平知章(1183年<寿永2>~同年8月6日)従五位上
- 足利義兼
- 平賀義信(1184年<元暦元>6月20日~1195年<建久6>)従五位下
- 平賀惟義正四位下
- 平賀朝雅従五位上
- 大江親広
- 足利義氏
- 北条時房(1210年<承元4>1月14日~1217年<建保5>12月12日)従五位下
- 北条泰時(1219年<承久元>11月13日~1238年<暦仁元>4月6日)従五位上→従四位下
- 北条朝直(1238年<暦仁元>4月6日~1243年<寛元元>7月8日)従五位上→正五位下
- 北条経時(1243年<寛元元>7月8日~1246年<寛元4>4月19日)正五位下
- (権守)北条時広(1247年<宝治元>3月6日~1258年<正嘉2>1月13日)従五位下
- 北条長時(1256年<康元元>7月20日~1264年<文永元>7月3日)従五位下→従五位上
- 北条宣時(1267年<文永4>6月23日~1289年<正応2>6月23日)従五位下→正五位下
- 北条義政(1273年<文永10>7月1日~不詳)従五位下
- 北条宗政(1277年<建治3>6月17日~1281年<弘安4>8月9日)従五位下
- 北条時村(1282年<弘安5>8月23日~1303年<嘉元元>11月17日)従五位下→従四位下
- 北条熈時(1306年<徳治元>2月9日~1311年<応長元>12月24日)正五位下
- 北条貞顕(1312年<正和元>~1322年<元享2>)正五位上
- 北条守時( ~1326年<嘉暦元>)従五位下
- 北条貞将(1327年<嘉暦2>~1333年<正慶2・元弘3>5月21日)従五位下
- 足利尊氏(1333年<正慶2・元弘3>8月5日~1334年<建武元>9月4日)正三位
- (権守)高師直従五位下
- 細川頼之(1368年<応安元・正平23>4月5日~1379年<康暦元・天授5>閏4月14日)従五位下
- 細川勝元(1449年<文安6>4月14日~ )従五位下
- 細川高国(1521年<大永元>11月12日~1525年<大永5>4月21日)従五位下
[編集] 武蔵介
- 平春香(860年<貞観2年>1月16日~861年<貞観3>2月16日)従五位上
- 源経基(「938年<天慶元>2月から将門記所載~940年<天慶3>1月9日」、日本紀略所載)六位~従五位下
- 藤原真枝
[編集] 守護
[編集] 鎌倉幕府
- 1184年~1195年 - 平賀義信
- 1207年~1239年 - 北条時房
- 1240年~? - 北条泰時
- 1245年~? - 北条経時
- ?~1256年 - 北条時頼
- 1256年~? - 北条長時]
- 1266年~1272年 - 北条時宗
- 1279年~? - 北条時守
- 1292年~1310年 - 北条貞時
- ?~1333年 - 北条高時
[編集] 室町幕府
- 1337年~1338年 - 高重茂
- 1341年~1344年 - 高師冬
- 1346年~1351年 - 高師直
- 1351年 - 上杉憲将(又は上杉憲顕)
- 1351年~1352年 - 仁木義章
- 1357年~? - 畠山国清
- 1368年 - 上杉憲顕
- 1368年~1378年 - 上杉能憲
- 1378年~1379年 - 上杉憲春
- 1379年~1394年 - 上杉憲方
- 1397年~1409年 - 上杉朝宗
- 1419年~1439年 - 上杉憲実
- 1440年~1441年 - 上杉清方
- 1446年~1454年 - 上杉憲忠
- 1454年~1466年 - 上杉房顕
- 1466年~1481年 - 上杉顕定
[編集] 郡
武蔵国には、21郡(後に22郡)が置かれた。陸奥国の40郡に次いで多い。
- 新羅郡(新座郡・新倉郡)
- 入間郡
- 高麗郡
- 比企郡
- 男衾郡
- 幡羅郡
- 榛沢郡
- 那珂郡
- 久良岐郡(くらきぐん、または「久良郡」)
- 都筑郡(つづきぐん)
- 多摩郡(多麻郡や多磨郡とも。たまぐん)
- 橘樹郡(たちばなぐん)
- 足立郡
- 児玉郡
- 賀美郡(加美郡とも)
- 秩父郡
- 横見郡
- 埼玉郡
- 大里郡
- 荏原郡(えばらぐん)
- 豊嶋郡
- 葛飾郡(葛西郡)
[編集] 人口
- 1721年(享保6年) - 190万3316人
- 1750年(寛延3年) - 177万1214人
- 1756年(宝暦6年) - 177万4064人
- 1786年(天明6年) - 162万6968人
- 1792年(寛政4年) - 163万4048人
- 1798年(寛政10年)- 166万6131人
- 1804年(文化元年)- 165万4368人
- 1822年(文政5年) - 169万4255人
- 1828年(文政11年)- 171万7455人
- 1834年(天保5年) - 171万4054人
- 1840年(天保11年)- 172万1359人
- 1846年(弘化3年) - 177万7371人
- 1872年(明治5年) - 194万3211人
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 令制国一覧
-
- 東京都の自治体
-
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畿内: 山城 | 大和 (芳野監) | 河内 | 和泉 | 摂津 東海道: 伊賀 | 伊勢 | 志摩 | 尾張 | 三河 | 遠江 | 駿河 | 伊豆 | 甲斐 | 相模 | 武蔵 | 安房 | 上総 | 下総 | 常陸 東山道: 近江 | 美濃 | 飛騨 | 信濃 (諏方) | 上野 | 下野 | 陸奥 (石城、石背 / 陸中、陸前、磐城、岩代) | 出羽 (羽前、羽後) 北陸道: 若狭 | 越前 | 加賀 | 能登 | 越中 | 越後 | 佐渡 山陰道: 丹波 | 丹後 | 但馬 | 因幡 | 伯耆 | 出雲 | 石見 | 隠岐 山陽道: 播磨 | 美作 | 備前 | 備中 | 備後 | 安芸 | 周防 | 長門 南海道: 紀伊 | 淡路 | 阿波 | 讃岐 | 伊予 | 土佐 西海道: 筑前 | 筑後 | 豊前 | 豊後 | 肥前 | 肥後 | 日向 | 大隅 (多褹) | 薩摩 | 壱岐 | 対馬 北海道: 渡島 | 後志 | 胆振 | 石狩 | 天塩 | 北見 | 日高 | 十勝 | 釧路 | 根室 | 千島