周遊券
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
周遊券(しゅうゆうけん)とは、公共交通機関を運営する会社が、観光を目的とする旅客に対して発売している割引の乗車券のことである。
目次 |
[編集] 国鉄の周遊券
[編集] 概要
周遊券の歴史は古く、その起源は大正時代末期の1925年10月に遡る。当初は「遊覧券」と呼ばれていた。これは観光に必要な鉄道・バス・船舶の乗車に必要な乗車船券、食事・宿泊のための券が綴られたクーポンとなっており、鉄道省が制度を制定したが、これを作成するために数々の手間を要するため、企画・販売は日本交通公社(現在のJTB)に委託されていた。
これにより、観光に赴く旅客は事前の手配が遊覧券の手配だけで済むようになった。以降、1933年には北海道・九州内が乗り降り自由な遊覧券が設定され、1934年からは、一定の条件を満たせば、旅客が自由に遊覧券を作成できるようになった。1939年には名称を「観光券」と改めた。
しかし、戦時色が強くなると観光旅行自粛によるあおりを受け、1942年に一旦廃止された。
戦後、輸送事情がようやく落ち着きを見せてきた1955年に、遊覧券と類似した「周遊割引乗車券」(周遊券)を制定した。数々の改定を経て、1972年以降、JR発足後もしばらくの間、以下の種類の周遊券が設定されていた。また、周遊券に関する規定として「周遊割引乗車券発売規定」を定め、1983年に特別企画乗車券制度が制定されても、周遊券は別の取り扱いとした。周遊券には、特別企画乗車券と同じように、券の左上に丸で囲った「遊」のマークがある。
[編集] 種類
- 一般周遊券(普通周遊乗車券)
- 1955年から発売し、下記の条件を満たせば、旅客自身が自由に旅程を決めることができる周遊券である。
- 日本各地に設定した周遊指定地(117カ所)を2つ以上訪れる。但し、特定周遊指定地(14カ所)を訪れる場合は1つ以上でよい(1969年から)。なお地域によっては、通常の周遊指定地1ヵ所のみでもよい「ワンポイント周遊券」というものが発売されることもあった。
- 出発駅と帰着駅を同一にする。
- 国鉄線と連絡する会社線を連続して乗車する(空白区間があってはいけない)。
- 国鉄線・鉄道連絡船・国鉄高速バス(1968年以降)を営業キロで101キロ(1964年以降201キロ)以上利用する。
- 必要な乗車船券を全て一括で購入する。
- 運賃は、正規の運賃から、国鉄線・連絡船2割引(発売当初は1割引)、国鉄バス・会社線1割引にし、有効期間1ヵ月として発売した。当初は指定地間の運賃が他の運賃の10%以上なければいけなかった(近隣の指定地を回ることで往復乗車券としての利用を抑制するため)が、1964年に廃止された。
- また、1959年には、新婚旅行向けに「ことぶき周遊券」を設定した。当初は1等または2等を601キロ以上乗車する場合に発売していたが、数々の改定の後、新婚旅行であるか否かに関わらず、夫婦向けの「グリーン周遊券」となった。発売条件は一般周遊券と同じであるが、加えてグリーン車・A寝台を201キロ以上利用することも条件であった。運賃は一般周遊券と同じ割引率であったが、加えて特急料金・急行料金・グリーン料金・指定席料金が2割引(但し、1992年から運転を開始する「のぞみ」の特急料金は割引しない)であった。
- 均一周遊乗車券
- ワイド周遊券(ミニ周遊券登場以後、「一般用均一周遊乗車券」)
- 1956年から発売し、需要の見込まれる地域から周遊地域への往復分の国鉄乗車券(九州、四国では片道関西汽船を利用できるものもあった。)と、周遊地域での国鉄線が乗り降り自由(自由周遊区間)となる周遊券。あらかじめ指定し、特定の運賃としたため、駅で常備でき、旅客からの申し出ですぐに発券できた。
また、均一周遊乗車券では、経路上の周遊指定地への会社線も1割引で購入できた。 - 最初に指定されたのは北海道で、以後、九州、四国、東北・・・と徐々に拡大していった。後に、ゆき・かえり、及び自由周遊区間で急行列車の普通車自由席の利用を認めた。特急列車が増加すると、自由周遊区間内に限り、特急列車の普通車自由席の利用を認めた。しかし、急行列車の指定席および特急・急行列車のグリーン車、寝台車の利用時に特急、急行料金(普通車自由席利用時と同額)免除の特典はなかった。
- 航空機の増発と利便性の向上により東京と北海道・九州間の鉄道のシェアが減少し始めたことから、1965年から新たに、片道は国鉄線・片道は航空機を利用することができる「立体周遊券」(北海道・九州)を設定した。
これが発展して、自由周遊区間までの往復の交通機関を旅客自身が決めることができる「ニューワイド周遊券」(北海道・四国・九州)となった(往復の運賃は、指定された交通機関に限り、一般周遊券と同率の運賃の割引をする)。 - 以後、北海道ワイド周遊券で十和田湖周辺を行きまたは帰りに通過できるオプション券の発売、北陸ワイド周遊券で周遊地に能登を追加する「能登付随券」、東日本の信州ワイド周遊券で片道だけ名古屋経由にできる「名古屋経由券」が設定された。
- 1956年から発売し、需要の見込まれる地域から周遊地域への往復分の国鉄乗車券(九州、四国では片道関西汽船を利用できるものもあった。)と、周遊地域での国鉄線が乗り降り自由(自由周遊区間)となる周遊券。あらかじめ指定し、特定の運賃としたため、駅で常備でき、旅客からの申し出ですぐに発券できた。
- ミニ周遊券(特殊用均一周遊乗車券)
- ワイド周遊券(ミニ周遊券登場以後、「一般用均一周遊乗車券」)
- ルート周遊券
- 1972年から発売され、一般周遊券のモデルコースを国鉄独自に設定したもので、季節や時期によって様々なルートを設定し割安な運賃で発売した。JR化後も発売されたが、数年で発売休止となった。
参考文献:『国鉄乗車券類大事典』近藤喜代太郎・池田和政著、JTB
[編集] JRの周遊券「周遊きっぷ」
[編集] 概要
1987年4月1日に国鉄を分割・民営化して誕生したJR旅客6社では、当初、周遊券を国鉄時代の制度のまま引き継いで発売していた。しかし、時代が変化し、国鉄時代の周遊券制度が時代に合わなくなってしまった。
- ワイド周遊券・ミニ周遊券では、フリー区間までの往復とフリー区間内で急行列車の普通車自由席を利用できる(「ワイド」のフリー区間内では特急の普通車自由席も利用可)ものの、長距離を運転する急行列車が年々廃止されて消滅していったため、金額的なメリットが低くなってしまった。
- ワイド・ミニ周遊券は価格などが予め設定されていることから気軽に購入できる反面、次のような融通に欠ける面があった。
- 出発駅が主要駅に限定されているため、発売対象駅以外から利用したい旅客は対象駅までの運賃・料金が別途必要
- 予め指定された出発地の周辺でしか購入することができず、他地域発のものも購入不可
- フリー区間までの往復の経路は(複数の候補から選択することができる場合もあったものの)予め指定されていたため、それと異なる経路を通りたい場合は指定経路外の部分の運賃・料金が別に必要
- 一般周遊券・グリーン周遊券では、旅客があらかじめ利用する交通機関を調べてプランニングしなければならず、JRや旅行会社にとっては発券に非常に手間がかかり運賃計算も煩雑なために嫌われ、さらに格安のバスツアーや気軽なパック旅行の登場が周遊券の需要を減少させた。
- 東京-大阪間などを単に往復する際に、乗りもしない安価な周遊指定線をつけて一般周遊券にし、裏技的に運賃を安くする利用者が出てきたことがJR側に問題視された(但し、次項のケースとは違って法的な問題は無く、「利用者の知恵」として受け止めるべき事柄である)。
- ワイド周遊券の通用期間が長い(最大20日)のをいいことに、特急に乗車可能なワイド周遊券を定期乗車券代わりに利用する人が出てきたことなど、周遊券本来の販売目的と乖離した使用法が目立ちはじめた。また、北海道ワイドなど有効期間が長いものでは、雑誌などで「鉄道旅行の知恵」として紹介されたこともあり、有効日数の余った周遊券を他の利用者と交換するといった行為が横行していた(使用開始後の乗車券類は約款で対価の有無を問わず譲渡が禁止されている)。
以上のように、従来の周遊券は、利用者のメリットが減少する一方(但し後述のとおり、「周遊きっぷ」化で更にメリットは減少した)、発券する事業者からも望まれない切符となってしまったのである。
これを受け、周遊券制度を抜本的に見直し、1998年4月1日からセミオーダーメイドタイプの「周遊きっぷ」に切り替えた。
「周遊きっぷ」は、国鉄時代の「ニューワイド周遊券」に似ており、あらかじめ定められた「周遊ゾーン」(周遊券で言う自由周遊区間)を選んで、出発駅からそのゾーンまでの往復にJR線を利用する。ゾーン内のJR線では特急・急行・快速・普通の普通車自由席に乗車できるほか、ゾーンに含まれていれば新幹線の普通車自由席にも乗車できる。また、ゾーンまでの往復の経路は若干の制約(後述)はあるものの基本的に自由で、出発地も任意に指定でき、この点に限っては柔軟性が格段に上がった。
きっぷの構成は「ゾーン券」・「ゆき券」(出発駅からゾーンまで)と「かえり券」(ゾーンから出発駅まで)の3枚からなる(この他に注意事項などが書かれた「ご案内」が1~数枚付属する)。ゆき券とかえり券を総称して「アプローチ券」と呼ぶ。なお、一組の周遊きっぷには1つのゾーンしか利用することはできない(複数のゾーンを組み込むことはできない)。また、ゾーン券のみを単独で購入することもできない。
周遊きっぷの発売金額は、ゾーン券・ゆき券・かえり券の合計となる。ゾーン券の額はゾーン毎に決められており(周遊ゾーンの一覧を参照)、アプローチ券の額は乗車経路に従って通常通り計算した片道乗車券の金額を一定の割合で割り引いたものである。
[編集] 購入方法
発売開始は、ゆき券の利用開始日の1カ月前から、全ての券を一組として「みどりの窓口」および旅行会社で発売される。ただし、購入する箇所が含まれている周遊ゾーンのゾーン券は購入できない。
- 例:東京都内の駅の「みどりの窓口」・旅行会社の窓口では「東京ゾーン」のゾーン券を購入できない。
購入に際しては、出発駅(=帰着駅)、アプローチ券の経路および出入口駅(または航空便)を指定する。JRなどでは窓口で配布している専用の申込用紙に記入するが、JTBなどでは専用の申込用紙がない。詳しくは窓口で確認されたい。
なお、購入時の発券に手間取り、申込から購入の完了まで数十分から数日という時間を要することがしばしばあるので注意が必要である。また、日数や時間に余裕がなかったり、窓口が混み合っている場合は発券を断られる場合もある。
[編集] その他の注意事項
- ゾーン券とアプローチ券は、券は分かれているが一体のきっぷであり、ゾーン券使用中はかえり券を必ず所持していなければならない。
- 通常の乗車券と異なり、ゾーン券においては在来線と新幹線を別の路線として扱う。そのため、ゾーン内に明示的に含まれていない場合、ゾーン券で新幹線に乗車することはできない(特急券の他に乗車券も必要となる)。また、アプローチ券についても、東海道新幹線だけは在来線(東海道本線)とは別の路線として取り扱う(詳しくはアプローチ券の発売条件の項を参照)。
- 2004年12月現在、ゾーン内に含まれている新幹線は中国地方のゾーンにおける山陽新幹線のみとなっている。
- 使用開始前であれば、周遊ゾーン、ゆき券・かえり券の区間・経路を1回に限り変更できる。使用開始後は、東海道新幹線と東海道本線を変更する以外は変更できない。また、使用開始前の券片であれば、使用開始日を変更できる。
- 払い戻しは、全ての券片が未使用であれば、所定の手数料を差し引いて払い戻される。使用後は、ゆき券を使用後に払い戻す場合は、ゾーン券とかえり券を一緒に払い戻さなければならない(ゾーン券のみやかえり券のみの払い戻しはできない)。ゾーン券を使用後に払い戻す場合は、かえり券のみ払い戻すことができる(ゾーン券の払い戻しはできない)。使用中のゆき券・かえり券が払い戻せるかどうかは、駅の係員に確認すること。
- ゆき券・かえり券、及び周遊ゾーン内で駅レンタカーを割引料金で利用できる。
- 継続乗車船に一定の制約がある。
[編集] 周遊きっぷの問題点
結果として、周遊きっぷは「一般周遊券」の自由度と「ワイド・ミニ周遊券」の手軽さを引き継いだ、中間的な性格のものとなった。しかし、自由度が上がった反面、次のような問題点も発生している(なお、有効期間に関する問題は、上述の「使い廻し」に対するJR側の過剰な「防衛措置」だとも指摘されている)。
- ワイド・ミニ周遊券とは異なり、ゾーン外で急行列車の自由席を利用する場合は別に急行券を購入しなければならない。そのため、(数少ないとはいえ)辛うじて残っている夜行急行を利用していた旅客にとっては負担増となった。
- 基本的に会社線やバス路線の運賃を計算しなくてもよくなった分だけ一般周遊券に較べれば手間はかからなくなったが、往復の経路を自由に設定できるようになったことで旅客一人一人に対して毎回作り直すことになり、ワイド・ミニ周遊券からは比べ物にならないほど手間がかかるようになった。
- そもそも過去の周遊券と比較して、割引率が低下し利用者に対するコスト増を招いている上、東海道新幹線に関して奇妙な制約や割引率の変化があり(アプローチ券の発売条件および運賃の項で詳述)、その関係で金額面や経路指定において制度がわかりづらくなっている。
- ゾーン内の有効期間はその広さに関わりなく一律で5日間しかなく、九州ゾーンなど利用価値に疑問のあるものが存在する(あまりにも不評だったためか、のちに北海道ゾーンだけは10日間用も設定された)。さらに、有効期間の項で後述する通り、ゾーン券の有効期間は実質的に1~2日目減りすることが多いため、それ以外のゾーンでも非常に使いづらい。
- 一組の周遊きっぷ全体としての有効期間の構成が複雑で、利用者側が十分に慣れないと活用が難しい。
- 一部のワイド・ミニ周遊券にはオプションでエリアや経路の選択肢が拡がる券を追加することができたが、周遊きっぷにこのような制度はなく、かえって旅程が硬直化したと指摘する声もある(複数のゾーン券を組み込めるようになれば解決する問題でもある)。
- 後述の東海道新幹線と東海道本線の間での変更を除き、使用開始後は一切経路の変更ができないため、旅行中に旅程を柔軟に変更することが困難である。
- 一般周遊券・ニューワイド周遊券の時代は往復に営業距離の長い近鉄や航空機・長距離フェリーなど多くの選択肢が利用できたが、周遊きっぷでは往復ともJR、もしくは片道を航空機にする(それも九州・四国・北海道にいく場合のみ)しか選択肢がない。瀬戸内海を越えるルートでは利用者の多い関西汽船・石崎汽船・瀬戸内海汽船・防予汽船・宇和島運輸の航路が利用できたが、周遊きっぷでは航路は認められないため制約となり、利用者は四国全線フリーきっぷの「バースデイきっぷ」などに流れた。
また、従来の周遊券が「周遊券規則」という約款で定められていた(書店でも入手可能であった)のに対し、周遊きっぷは「通達」という内部文書で定められているため、透明性が低く、現場への浸透度も高くない(JRの担当箇所に問い合わせないと解らないことが多い)。このように、利用者にとって解りづらいばかりか、窓口での発券においても非常に煩雑なものとなっているため、窓口では露骨に嫌な顔をされたり、発売を断られたりすることもある。さらに、一般にあまり知られていないことも手伝って、現場の係員も制度を十分に理解していない場合が多く(「アプローチ券は最短経路でなければならない」と勘違いしたり有効期間の計算を間違えたり)、それがトラブルの原因となったりしてますます現場の忌避感を煽る結果ともなっている。そのため、利用者の側では現行の「周遊きっぷ」の不評と共に、過去の各種周遊券を懐かしむ声が非常に多い(更に窓口の担当者によっては、利用者の不満を理解しているケースもある有様である)。
[編集] アプローチ券
[編集] 発売条件
アプローチ券の経路は基本的に通常の片道乗車券の要件を備えていればよく、ワイド・ミニ周遊券と較べて自由度が増した。具体的には次の通り。
- 出発駅とゾーンまでの経路は自由に指定でき、ゆき・かえりの経路が同一である必要はない(もちろん同一でもよい)。また、最短経路でなくてもよい。例えば、東京から山陰ゾーンへ向かう際に東北地方を経由してもよい。
- 運賃や有効期間は実際の乗車経路に従って計算する。
- 通常の乗車券と同様、出発駅・帰着駅が特定都区市内駅に該当する場合は、その都区市内の中心駅を出発・帰着するものとして運賃・有効期間を計算する。
- 同様に、出入口駅が特定都区市内駅である場合は、その都区市内の中心駅に発着するものとして扱う。
- 経路特定・列車特定・選択乗車なども通常通り適用の対象となる。
さらに、ゾーンが北海道・四国・九州であれば、片道のみ指定された空港に発着する空路を利用することができる(航空券でゆき券もしくはかえり券を置き換える形になる)。この場合、航空券を同時に購入するか、予め購入した航空券(引換証)を提示する必要がある。航空券(航空運賃)の種類に制限はない。なお、出発・帰着する駅と空港が異なる地域にあってもよいが、空港への交通にJR線を利用する場合でもその区間をアプローチ券の経路として組み込むことはできない。ゾーンに対して指定された空港とゾーン内の間の交通についても同様。
しかし、全く制約がないわけではなく、以下のような条件を満たさなければならない。
- 出発駅と帰着駅は同一でなければならない。
- ゾーンには出入口となる駅が指定されており、ゆき券は出発駅から周遊ゾーンの入口駅まで、かえり券は周遊ゾーンの出口駅から帰着駅までとなる。入口駅と出口駅は同一でも異なっていてもよい。なお、指定されていない駅からゾーンに出入りすることはできない。例えば、広島・宮島ゾーンにおける芸備線の甲立駅や山陰ゾーンにおける木次線の木次駅は、いずれもゾーンの端の駅であるが出入口駅に指定されていないので、これらの駅を出入口とするアプローチ券は作成できない。
- アプローチ券はそれぞれJR線の営業キロで201キロ以上乗車しなければならない。ただし、実際に乗車する経路に沿った距離がこの条件を満たしていればよく、出発・帰着駅からゾーンまでの最短経路には因らない。例えば、敦賀から寝台特急「日本海」と特急「つがる」・東北新幹線・東海道新幹線を乗り継いで京都駅を経由し、園部駅から北近畿ゾーンへ入ってもよい(ただしこの例の場合、かえり券も201キロ以上となるよう大回りをする必要がある)。
- アプローチ券は片道乗車券でなければならない(連続乗車券となってはいけない)。また、他のトクトクきっぷや企画乗車券類(青春18きっぷなど)を組み込むこともできない。
- 「出入口駅を通過してゾーン内を通り別の出入口駅まで」という経路のアプローチ券は発売できない(ゾーンに含まれない新幹線を利用して出入りするときは可能)。そのため、目的のゾーン内を一旦通過して別の入口駅からゾーンに入るといったこともできない(出る場合も同じ)。例えば、福岡ゾーンへ本州から入る際、一旦在来線で入ったあと小倉駅から博多駅まで新幹線を利用する(九州内の山陽新幹線はゾーンに含まれない)からといって入口駅を博多駅とすることはできない(この場合の入口駅はあくまで門司駅)。一方、山陽新幹線で福岡ゾーンに入る場合、入口駅は小倉駅でも博多駅でもよい(新幹線はゾーンに含まれないため)。
また、通常の片道乗車券とは異なる、周遊きっぷのアプローチ券に特有の制限もある。
- 会社線を含むアプローチ券は購入できない。ただし、線内を通過するJR線からの直通列車がある以下の第三セクター鉄道は、両側をJR線に挟まれた形(通過)であれば利用可能。この場合のJR線の運賃は、会社線の前後のJR線の営業キロ・運賃計算キロを通算して運賃を算出する(通常の通過連絡と同じ扱い。ただし、下記以外の会社線については通過連絡となるアプローチ券を発売しない)。
- バスを含むアプローチ券も購入できないが、以下に挙げるJRバスは相当する区間のJR線を経路に含めることで乗車できる(高速バスの運賃は必要ない)。ただし、表記の区間のみの乗車に限られ、途中乗降や乗り越しは認められない。同区間に違う名前のバスが設定してある場合でも、表記の名称のバスの乗車に限られる(「ニュードリーム号」・「青春ドリーム号」・「東海道昼特急」などは利用できない)。昼行便は、ゆき券・かえり券の提示でそのまま乗車できるが、東名ハイウェイバスのS特急・超特急の東京駅乗車時など、乗車地・便によっては、乗車前に窓口できっぷを提示して便の指定を受ける必要がある。また、太字のバス(夜行便)を利用する場合には、別に「JR夜行バス周遊利用券」を必要とする(おとなの料金を区間の右側の< >内に示す。こども用・学割用もあり)。
- 東海道新幹線に関しては、全区間に渡って東海道本線とは別の路線として扱う。そのため、経路として新幹線を指定した区間は在来線には乗車できず、逆に東海道本線を指定した区間では新幹線には乗れない。この扱いは東海道新幹線区間だけのもので、その他の新幹線については通常の片道乗車券と同じ条件で取り扱う。なお、東海道新幹線と東海道本線相互間の経路変更を行うことはできるが、不足額が発生した場合は差額を徴収され、余剰額が発生しても払い戻しはない。
[編集] 運賃
アプローチ券の運賃は、次のように計算する。
- JR線・連絡船(宮島航路)の運賃は2割引(学割は3割引)。いずれも10円未満の端数は切り捨て。
- ゆき券、またはかえり券の経路内に東海道新幹線を含み、東海道新幹線を含む券のJR線の距離が営業キロで600キロ以内である場合は5%引(学割は2割引)
[編集] 効力
アプローチ券は単なる乗車券としての効力しか持たないため、ゆき・かえりで特急・急行列車、グリーン車・寝台車などを利用する場合は、別に特急券・急行券、グリーン券・寝台券などを購入する必要がある。
同様に、JRの高速バス(夜行便)を利用する場合には、別に「JR夜行バス周遊利用券」を購入する。
[編集] ゾーン券
ゾーン券はそのエリアと発売額が決められており、ゾーンに指定された区間内では特急・急行・快速・普通列車の普通車自由席に乗車できるほか、ゾーンに含まれている区間では新幹線の普通車自由席にも乗車できる。ゾーンによっては私鉄やバスが含まれているものもあり、その区間内も乗降自由となる(ただしゾーン内に含まれる区間でも高速バスは除外されるなど条件付きの場合があるので注意)。
ただし、特急・急行・快速・普通列車の指定席やグリーン車、寝台車に乗車する場合は乗車券としての効力のみとなり、それぞれ料金券と呼ばれる「特急券(指定席)」「指定席券」「グリーン券」「寝台券」などが必要となる(なお急行の指定席・グリーン車・寝台車を利用する場合は別途急行券の購入も必要である)。指定席券やグリーン券・寝台券など、自由席との差額に相当する料金券を購入するのではないので注意されたい。また俗に“ヒルネ”と呼ばれる寝台特急の座席利用についても別途「立席特急券」を購入しなければならない(自由席特急券と同額であるが周遊きっぷのゾーン券に“立席特急券”についての記述がないためと思われる)。
また、ゾーンの区域内にある新幹線や在来線がゾーンに指定されていない場合、その区間は「ゾーン外」であり、乗車には新幹線特急券の他に乗車券も必要となる。
有効期間はエリアの広さに関わりなく一律5日間である。ただし、「北海道ゾーン」のみ10日間用の設定もある。
[編集] 有効期間
有効期間の計算は、非常に複雑である。ゆき券・かえり券については通常通り有効日数を計算し、これとゾーン券の有効期間を加味して最終的な有効期間が決まる。
ゆき券・かえり券については、JRの片道乗車券の有効日数と同じである。
- ゆき券・かえり券の有効日数=乗車するJR線の営業キロ÷200+1(小数点以下切り上げ)
ゾーン券の有効期間は、「北海道ゾーン」の10日間用を除き、一律5日間である。
ゾーン券の有効開始日はゆき券の有効期間内でなければならず(最低1日は有効期間を重ねなければならない)、かえり券の有効開始日はゾーン券の有効期間内でなければならない(同様)。そのため、周遊きっぷ全体での最長の有効日数は、「ゆき券の有効日数+ゾーン券の有効日数+かえり券の有効日数-2」(日)となる。
- 例1: ゆき券・ゾーン券・かえり券がそれぞれ8日・5日・13日の場合 = 24日
-
-
ゆき券: ○○○○○○○ ● ゾーン券: ● ○○○ ● かえり券: ● ○○○○○○○○○○○○
-
しかし、実際にはゾーン券の有効開始日はゾーン券の使用開始日に合わせなければならないため、入口駅から先へ進んだ時点でゆき券の残余日数は無効となる(ちなみに、ゾーン券の有効開始日は購入時に予め指定しなければならず、それより遅く使い始めるのは構わないが、その場合でも購入時に決まった有効期間の終了日は変化しない)。同様に、仮にゾーン券の有効期間が残っていても、かえり券はゾーンを出る日から有効にしなければならない。
- 例2: ゆき券・ゾーン券・かえり券の有効日数が例1と同じで、出発から2日目にゾーン内に入り、ゾーンに入って5日目にゾーンを出る場合 = 18日
-
-
ゆき券: ○ ● ・・・ ・ ・・ ゾーン券: ● ○○○ ● かえり券: ● ○○○○○○○○○○○○
-
特に、夜行列車などで日付の変わる直前にゾーンに入ったり、朝早くゾーンを出るときなどは、ゾーン券の有効日数のうちの1日をわずか数時間や数分で消費してしまうことがあるので、注意が必要である。もしも日付が変わる直前に入口駅を通過したり、ゾーン内に入った直後に所用などでゾーン券を使わずに数日過ごす場合などは、入口駅から最低限必要な区間の乗車券を別途購入してゾーン券の使用開始日を遅らせるなどといった工夫が必要となることもある(ゾーン券の有効開始日はゆき券の有効期間内にあればよく、入口駅に到着したらすぐにゾーン券を使わなければならないわけではないし、入口駅から使用を開始しなければならないという定めはない)。ただし、当然ながらこういった手段はあくまでゆき券の有効期間に余裕がある場合に限られる。
空路を利用する場合も同様で、ゆきに航空機を利用する場合、ゾーン券の有効開始日は航空機の搭乗日と同日となり、かえりに航空機を利用する場合、航空機の搭乗日はゾーン券の有効期間内でなければならない。
[編集] 周遊ゾーンの一覧
周遊ゾーンは当初67種類設定されていたが、利用者が少ないことを理由として2002年に29のゾーンを一斉に廃止し、以後いくつかの新設・廃止を経て、2006年12月現在、34の周遊ゾーンがある。
以下に、2006年12月現在発売されている周遊ゾーンの一覧を挙げる。< >内はゾーン券のおとなの価格。こどもは半額(5円の端数は切り捨て)。
[編集] JR北海道管内
- 北海道ゾーン<5日間用20,000円、10日間用28,000円>
- 札幌・道東ゾーン<12,000円>
- 札幌・道北ゾーン<9,000円>
- 札幌・道央ゾーン<9,000円>
- 札幌・道南ゾーン<9,000円>
- 札幌近郊ゾーン<3,800円>
[編集] JR東日本管内
- 田沢湖・十和田湖ゾーン<3,370円>
- 山寺・松島ゾーン<3,300円>
- 福島・蔵王ゾーン<3,500円>
- 東京ゾーン<4,000円>
- 入口駅・出口駅:東京駅・品川駅・新横浜駅・上野駅(以上の駅は新幹線を利用してゾーンに出入りする場合の入口駅・出口駅)・大船駅・橋本駅・高尾駅・拝島駅・大宮駅・取手駅・成田駅・蘇我駅
- 指定区間:東海道本線東京駅~大船駅間(大井町駅、西大井駅経由とも)、東北本線東京駅~大宮駅間(王子駅、尾久駅、川口駅・浦和駅、戸田公園駅・与野本町駅経由とも)、中央本線東京駅~高尾駅間、総武本線東京駅~佐倉駅間・御茶ノ水駅~錦糸町駅間、八高線八王子駅~拝島駅間、外房線千葉駅~蘇我駅間、成田線佐倉駅~成田駅~我孫子駅間、山手線・赤羽線・南武線・鶴見線・根岸線・横須賀線・横浜線・青梅線・五日市線・武蔵野線・京葉線の全線、及び東京臨海高速鉄道りんかい線・東京モノレール羽田線の全線。
[編集] JR東海管内
- 飛騨・奥飛騨ゾーン<3,780円>
[編集] JR西日本管内
- 富山・高岡ゾーン<4,200円>
- 加賀・能登ゾーン<4,300円>
- 越前・若狭ゾーン<4,300円>
- 近江路ゾーン<3,800円>
- 京阪神ゾーン<3,700円>
- 入口駅・出口駅:京都駅・新大阪駅(新幹線を利用してゾーンに出入りする場合の入口駅・出口駅)・明石駅・亀岡駅・宝塚駅・木津駅・日根野駅・五条駅
- 指定区間:東海道本線京都駅~神戸駅間、山陽本線神戸駅~明石駅間・兵庫駅~和田岬駅間、山陰本線京都駅~亀岡駅間、福知山線尼崎駅~宝塚駅間、阪和線天王寺駅~日根野駅間・鳳駅~東羽衣駅間、関西本線木津駅~JR難波駅間、和歌山線王寺駅~五条駅間、大阪環状線・桜島線・JR東西線・片町線・奈良線・桜井線・関西空港線の全線、及び嵯峨野観光鉄道嵯峨野観光線の全線(利用の際には座席指定を受ける)、西日本JRバス京都駅~栂ノ尾間・大阪駅・三ノ宮駅~大磯・洲本間(「かけはし号」・「大磯号」、利用の際には座席指定を受ける)。
- 南紀ゾーン<5,000円>
- 北近畿ゾーン<4,800円>
- 山陰ゾーン<5,300円>
- 岡山・倉敷ゾーン<4,600円>
- 広島・宮島ゾーン<4,500円>
- 津和野・秋芳・萩ゾーン<5,300円>
- 下関・北九州ゾーン<4,800円>
[編集] JR四国管内
- 四国ゾーン<12,500円>
- 高松・松山ゾーン<7,300円>
- 徳島・室戸・高知ゾーン<6,950円>
- 四万十・宇和海ゾーン<4,260円>
[編集] JR九州管内
- 九州ゾーン<14,500円>
- 福岡ゾーン<4,500円>
- 佐賀・長崎ゾーン<4,000円>
- 大分ゾーン<4,000円>
- 熊本ゾーン<3,800円>
- 宮崎ゾーン<3,800円>
- 鹿児島ゾーン<3,800円>
[編集] 廃止になった周遊ゾーン
2002年10月1日発売終了 |
2004年6月1日発売終了
2004年12月1日発売終了
|
|
|
|
[編集] 数日有効の全線乗車券
全線または、一部地域において1日有効で発行される「一日乗車券」がある。これについては、一日乗車券を参考されたい。また、これの有効期日を2日以上有するものについてを、ここに挙げる。
[編集] 北海道
[編集] 青森県
- ジェイアールバス東北青森支店
- 青森・十和田湖フリーきっぷ2日間
[編集] 宮城県
[編集] 栃木県
- 東武バス日光
- 湯元温泉フリーパス(2日間有効)
- 中禅寺温泉フリーパス(2日間有効)
- 戦場ヶ原フリーパス(2日間有効)
- 霧降高原フリーパス(2日間有効)
[編集] 千葉県
- ディズニーリゾートライン
- フリーきっぷ(2・3・4日有効) 2日600円、3日800円、4日1,000円(各、子供半額)
[編集] 神奈川県・静岡県
[編集] 新潟県
- 新潟交通佐渡
- 佐渡島内路線バス2日フリー乗車券(土休日)
[編集] 富山県
- 富山地方鉄道
- 電車全線2日間フリー乗車券(電車・市内線) 4,400円(子供半額)
[編集] 愛知県・岐阜県
- 名古屋鉄道
- 2DAYフリーきっぷ 3,800円(子供半額)
[編集] 滋賀県・京都府・大阪府・奈良県・三重県・和歌山県・兵庫県
- スルッとKANSAI加盟会社の鉄道・バス路線(※詳細はスルッとKANSAIの「チケット」の節を参照)
- 2dayチケット(連続でなくとも任意の2日間使用可能。近畿2府5県除く全国の旅行代理店で販売) 3,800円(子供半額)
- 3dayチケット(連続3日間有効。近畿2府5県除く全国の旅行代理店で販売) 5,000円(子供半額)
- 3dayチケット(連続でなくとも、春季・夏季・秋季の各使用期間において任意の3日間使用可能。前述時期に限定して、近畿地区の主要駅・旅行代理店で販売) 5,000円(子供半額)
[編集] 京都府
[編集] 愛知県・京都府・大阪府・奈良県・三重県
[編集] 兵庫県
- 神戸市交通局のバス
- 市バス専用2日カード 1,000円(子供半額)
[編集] 鳥取県
[編集] 島根県
[編集] 広島県
[編集] 香川県・愛媛県・徳島県・高知県
[編集] 福岡県・佐賀県・長崎県・大分県・熊本県
- 西日本鉄道バス、長崎県交通局、長崎自動車、九州急行バス、西肥自動車、日田バス、大分バス、島原鉄道バス、九州産業交通、大分交通、亀の井バス、昭和自動車、JR九州バス、北九州市交通局、堀川バス、佐賀市交通局、祐徳自動車、熊本バス、熊本電鉄バス
- SUNQパス(北部九州)(連続する3日間有効) 6,000円(九州島外)、8,000円(九州島内)
- 高速バス、一般路線バスに乗車可能。九州~本州・四国の高速バス、定期観光バス、会員バス等は乗車不可。
- SUNQパス(北部九州)(連続する3日間有効) 6,000円(九州島外)、8,000円(九州島内)
[編集] 福岡県・佐賀県・長崎県・大分県・熊本県・宮崎県・鹿児島県
- 西日本鉄道バス、長崎県交通局、長崎自動車、九州急行バス、西肥自動車、日田バス、大分バス、島原鉄道バス、九州産業交通、大分交通、亀の井バス、昭和自動車、JR九州バス、北九州市交通局、堀川バス、佐賀市交通局、祐徳自動車、熊本バス、熊本電鉄バス、宮崎交通、鹿児島交通、南国交通、林田バス
- SUNQパス(全九州)(連続する3日間有効) 10,000円
- 高速バス、一般路線バスに乗車可能。長崎~宮崎の高速バス、九州~本州・四国の高速バス、定期観光バス、会員バス等は乗車不可。
- SUNQパス(全九州)(連続する3日間有効) 10,000円
[編集] 沖縄県
- 沖縄都市モノレール
- 二日乗車券 1,000円(子供半額)
- 三日乗車券 1,400円(子供半額)